5 高次脳機能障害の固定までのポイント
高次脳機能障害が症状固定となるまでには、1、2年程度かかるのが一般的といわれており、比較的長期間を要します。高次脳機能障害の申請は、他の後遺障害と比べても特殊であり、この間に、障害認定を見据えた、戦略的な準備が必要となります。
たとえば、高次脳機能障害を理由とした後遺障害認定を受けるためには、3で述べたように、事故後の意識障害がどうであったかが極めて重要となります。そのため、この意識障害について、病院で適切な検査がなされていたかを、可能な限り早期の段階で調査し、事実と異なっていたり、適切な評価がされていないような場合は、病院側に対し、積極的に修正等の働きかけを行う必要があります。
また、認定要件の一つである、頭部外傷の立証資料として、事故後、適切な時期にMRI等の画像検査をすることも必須です。CTは撮影したが、MRIまでは撮っていないというケースも多いため、病院側にその必要性を説明し、検査を促すことが必要となります。
高次脳機能障害は、その特殊性から、病院においても見過ごされてしまうことが多いといえます。被害者の言動が、事故による影響であると把握されないまま、問題行動のある患者として扱われてしまうこともあり、専門知識を有する弁護士が介入し、適切な説明や働きかけを行うことが、特に必要である分野といえるでしょう。
また、通常の後遺障害申請とは異なり、後遺障害の申請にあたって、通常の後遺障害診断書のほか、「頭部外傷後の意識障害についての所見」という、事故直後の意識状態を記載する書面や、「神経系統の障害に関する医学的意見」という、被害者の運動機能や認知能力についての意見書を、医師に作成してもらう必要があります。これらの書面を適切に記載してもらうため、弁護士が介入して、医師との間で信頼関係を築きながら、被害者の病状を正確に伝えていくことが必須となります。
なお、高次脳機能障害の後遺障害申請にあたっては、被害者の家族が、被害者の日常生活(日々の認知状態がどのようなものであるか等)を記載した報告書を提出することになります。家族の方は、報告書の内容を意識して、日頃から被害者の方の言動に注意するようにし、気になることは記録しておくようにすべきでしょう。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。