4 高次脳機能障害と認定された場合の賠償額
高次脳機能障害と認定された場合に支払われる損害項目としては、代表的なものを挙げると、次のようなものがあります。
⑴ 治療関係費用
まず、治療費や入院費などの治療関係費については、必要性や相当性に問題がある例外的な場合を除き、その実費全額の賠償を受けられます(被害者側の過失がないことが前提です。)。また、症状が重篤な場合には、通院付添費や将来介護費、その他ホームヘルパーの費用などの介護関係費用、家屋や自動車の改造費用等も損害として認められる可能性があります。
⑵ 休業損害・逸失利益
休業損害は、事故による負傷や治療のため、本来得られたはずの収入が得られなくなったことによる損害、逸失利益は、後遺障害により、将来得られたはずの収入が得られなくなったことによる損害をいいます。
年齢や職業によって、賠償額は異なりますが、例えば、事故時29歳(症状固定時31歳)であった男性が、事故により、高次脳機能障害、嗅覚脱失、味覚減退等により併合4級の後遺障害と認定された事案において、就労可能な67歳までの逸失利益として、約8600万円を損害として認めた裁判例があります。
このように、休業損害や逸失利益は、事故後の被害者やその家族の生活を保障するものであることから、賠償額は高額になる傾向があります。
⑶ 慰謝料
慰謝料については、過去の裁判等の蓄積により、ある程度の基準が形成されており、入院や通院を余儀なくされたことによる慰謝料(入通院慰謝料)と、後遺障害が残ってしまったことに伴う慰謝料(後遺障害慰謝料)の2つに分けられます。
入通院慰謝料は、原則として入通院期間を基準として、損害額を算定します。例えば、事故により2カ月間入院し、その後8カ月間通院を余儀なくされた場合、入通院慰謝料は194万円が基準の金額となります。
他方、後遺障害慰謝料は、後遺障害として認定された場合の等級を基準として、損害額を算定します。高次脳機能障害が後遺障害として認定された場合、原則的には、9級以上の等級がつきますが(12等級や、他覚的な所見が無い場合には、14等級にとどまるケースもあります。)、例えば、後遺障害が9級と認定された場合の後遺症慰謝料は690万円、5級と認定された場合の後遺症慰謝料は1400万円、1級と認定された場合の後遺症慰謝料は2800万円が、それぞれ基準の金額となります。
以上のように、高次脳機能障害と認定された場合の賠償額は高額になる傾向があります。
もっとも、はじめから相手方の保険会社が上記のような金額を損害として認めてくれるわけではなく、相手方は、なるべく支払額を抑えようとしてきます。適切な賠償額を得るためには、何が損害として認められるか、相手方に対してどのように説得的に伝えるか、損害の発生をどのように立証するかが重要であり、そのため、高次脳機能障害が後遺障害と認定された後の、最終的な損害額の算定に当たっても、法律の専門家である弁護士の介入が不可欠といえます。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。