評価損として、損傷の部位・程度を考慮し修理費の30%相当額を認めた裁判例
評価損として、損傷の部位・程度を考慮し修理費の30%相当額を認めた裁判例 原告が運転する普通乗用自動車に、被告が運転する事業用大型貨物自動車が追突した交通事故の事案において、原告が被告に対し人身及び物損にかかる損害賠償請求訴訟を提起しましたが、そのうち、評価損が一つの争点となっていました(大阪地裁平成30年7月20日判決)。
事案の概要
評価損として、損傷の部位・程度を考慮し修理費の30%相当額を認めた裁判例
原告が運転する普通乗用自動車に、被告が運転する事業用大型貨物自動車が追突した交通事故の事案において、原告が被告に対し人身及び物損にかかる損害賠償請求訴訟を提起しましたが、そのうち、評価損が一つの争点となっていました(大阪地裁平成30年7月20日判決)。
原告の運転していた普通乗用自動車は、本件事故の2か月ほど前であった平成28年4月6日、訴外株式会社A社の自動車ローンを利用して購入したものでその車種はメルセデスベンツでした。分割手数料込の代金合計額は679万6612円であり、初度登録は平成28年4月となっていました。
原告は、訴訟において、初度登録わずか2か月であること、市場価値が大きく低下することなどから、評価損は、修理金額の50%相当である約80万円を下ることはないと主張しました。
この点について、裁判所は、原告の普通乗用自動車の修理費が160万3519円と認定した上で、評価損については次のとおり認定しました。
「車種、初度登録後約2か月で本件事故に遭ったこと、本件事故による損傷部位・程度等の諸事情を考慮すると、本件事故により生じた原告車の評価損は、修理費の3割に相当する48万1055円と認めるのが相当である」としたのです。
評価損は、保険会社との間でよく争点となる損害費目の一つです。新車で購入したばかりで追突事故の被害に遭ってしまった、売却するにも事故車扱いになってしまい中古価格も下がってしまう、そめてその下落分は相手に損害賠償として請求したいというご相談は多いです。
もっとも、実際の保険実務の対応としては、評価損が容易に認められるということにはなっていません。むしろ、経験上の感覚としては、評価損は認められづらい傾向にあるといってもよいかもしれません。もちろん、一概に評価損は認められづらいといえるわけではなく、事案の性質や相手保険会社の対応などによって判断は区々です。
実際の裁判例では、比較的購入からあまり時間が経過しておらず、いわゆる高級車と呼ばれる車種の場合に、修理費の10%~30%相当額を評価損と認める傾向にあるといえるでしょう。注意していただきたいのは、あくまで傾向であるということと、それでも修理費の10%~30%程度しか認めていないというところです。実際の市場価格の下落より修理費を基準として考えている裁判例が多いです。
このような傾向の中で、本件は、新車登録わずか約2か月程度のメルセデスベンツという高級車の事案において、修理費の30%を評価損として認めた事例判断になります。これまでの傾向にそった判断といえるでしょう。
- 逸失利益の定期金賠償を認めた事例(最高裁判所令和2年7月9日第一小法廷判決)
- 被害者(女性・80歳・主婦)の逸失利益について、夫と二人暮らし、夫の身の回りの世話をしていたとして家事従事者と認めた裁判例(大阪地裁平成30年7月5日)
- 左目の失明により運動能力が低下し、もとの持病が悪化した結果、右足膝下切断となった事案で、失明だけでなく切断との因果関係を肯定した裁判例(東京高裁平成30年7月17日)
- 評価損として、損傷の部位・程度を考慮し修理費の30%相当額を認めた裁判例
- 被害者の主張する代車費用を認めた事案(大阪地裁平成30年7月26日判決)
- 信号機による交通整理の行われている交差点において,右折合図することなく右折しようとした加害者(タクシー)と,対面信号機の青色表示に従って対向直進した被害者(原動機付自転車)とが衝突した事故において,被害者にも低速で右折を開始している加害者の動静に注視し,その安全を確認して進行すべき義務を怠った過失がないとはいえないとして,過失割合を,被害者側5%,加害者側95%と認めた事案(東京地裁平成30年5月9日判決)
- 事故により右大腿近位外側に皮下組織の損傷による皮膚の陥凹と色素沈着の残存、組織隆起等を残して症状固定となったメディアで活躍できるモデル等の仕事を将来の希望としていた被害者(女性・17歳)の後遺障害慰謝料について、同症状は、後遺障害等級14級5号に該当しないと認定しつつ、その大きさはそれなりに大きいこと、隆起が第三者からも認識可能であること、被害者の年齢、性別、将来の希望等を含め心理的負担を与えるなど事情を総合考慮して20万円の慰謝料を認めた事案(大阪地裁平成30年2月27日判決)
- 追突事故の受傷(頚椎捻挫など)により交通事故直後に予定されていた2件の国際ピアノコンクールへの出場を断念せざるを得なかった被害者(26歳・女性・ピアニスト)の慰謝料について、被害者の経歴や各コンクールで入賞するために努力を継続した事情に鑑みると、被害者の慰謝料算定において十分考慮すべき事情であるした事案(東京地裁平成30年1月29日判決)
- 交通事故の被害に遭う前日に月給70万円とする雇用契約を締結した男性被害者が,交通事故により頚椎捻挫,腰椎捻挫などの傷害を負った場合に,事故前3年間の事業所得が約20万円、0円、105万だったことを考慮してもなお、雇用契約相当の収入を得られる蓋然性があったとして、症状固定日までの約300日間の合計額約792万円の概ね7割に相当する555万円の休業損害を認めた事案(さいたま地裁平成30年1月17日判決)
- 被害者が行使する自賠法16条1項に基づく請求権の額と、労災補償法12条の4第1項に基づき国に移転し行使される上記請求権の合計額が、自賠責保険の保険金額を超える場合、被害者は国に優先して損害賠償額の支払いを受けられると判断した事案(最判平成30年9月27日)