被害者の主張する代車費用を認めた事案(大阪地裁平成30年7月26日判決)
被害者の主張する代車費用を認めた事案(大阪地裁平成30年7月26日判決)
事案の概要
本件は,Aが運転する原告使用の車両と,被告の運転する車両とが衝突した交通事故について,原告が被告に対し損害賠償(物損)請求をした事案です。
この事案では,Aが,原告車を通勤及びプライベート(買い物やレジャー)に使用していたとして,原告車と同様の車種(トヨタ べルファイア)を日額1万8360円で31日間使用していました。この代車使用料を損害として請求したところ,被告は,代車使用の必要性がないこと,日額が高額であること,使用期間が長期であることなどを反論していました。
この点について,裁判所は,Aが通勤及びプライベート(買い物やレジャー)のために使用していたものであり代車使用の必要性がないとはいえないとし,車種も通勤やプライベートの使用方法も考慮すれば不当とまではいえないとした。
そして,日額については,やや高額としながらもその車種であればあり得る金額であることなどを理由として相当な金額とし,最終的に原告の主張する代車使用料を損害と認めました。
物損のうち,代車については,その必要性及び金額について,交通事故との相当因果関係がないということで争点になることが多くあります。また,保険会社からも支払可能な金額以上は自己負担となるといった主張をされることでトラブルになることが往々にしてあります。今回の事案は,代車に関する損害についての事例判断といえ,実務的に参考になるため、ご紹介させていただきました。
- 逸失利益の定期金賠償を認めた事例(最高裁判所令和2年7月9日第一小法廷判決)
- 被害者(女性・80歳・主婦)の逸失利益について、夫と二人暮らし、夫の身の回りの世話をしていたとして家事従事者と認めた裁判例(大阪地裁平成30年7月5日)
- 左目の失明により運動能力が低下し、もとの持病が悪化した結果、右足膝下切断となった事案で、失明だけでなく切断との因果関係を肯定した裁判例(東京高裁平成30年7月17日)
- 評価損として、損傷の部位・程度を考慮し修理費の30%相当額を認めた裁判例
- 被害者の主張する代車費用を認めた事案(大阪地裁平成30年7月26日判決)
- 信号機による交通整理の行われている交差点において,右折合図することなく右折しようとした加害者(タクシー)と,対面信号機の青色表示に従って対向直進した被害者(原動機付自転車)とが衝突した事故において,被害者にも低速で右折を開始している加害者の動静に注視し,その安全を確認して進行すべき義務を怠った過失がないとはいえないとして,過失割合を,被害者側5%,加害者側95%と認めた事案(東京地裁平成30年5月9日判決)
- 事故により右大腿近位外側に皮下組織の損傷による皮膚の陥凹と色素沈着の残存、組織隆起等を残して症状固定となったメディアで活躍できるモデル等の仕事を将来の希望としていた被害者(女性・17歳)の後遺障害慰謝料について、同症状は、後遺障害等級14級5号に該当しないと認定しつつ、その大きさはそれなりに大きいこと、隆起が第三者からも認識可能であること、被害者の年齢、性別、将来の希望等を含め心理的負担を与えるなど事情を総合考慮して20万円の慰謝料を認めた事案(大阪地裁平成30年2月27日判決)
- 追突事故の受傷(頚椎捻挫など)により交通事故直後に予定されていた2件の国際ピアノコンクールへの出場を断念せざるを得なかった被害者(26歳・女性・ピアニスト)の慰謝料について、被害者の経歴や各コンクールで入賞するために努力を継続した事情に鑑みると、被害者の慰謝料算定において十分考慮すべき事情であるした事案(東京地裁平成30年1月29日判決)
- 交通事故の被害に遭う前日に月給70万円とする雇用契約を締結した男性被害者が,交通事故により頚椎捻挫,腰椎捻挫などの傷害を負った場合に,事故前3年間の事業所得が約20万円、0円、105万だったことを考慮してもなお、雇用契約相当の収入を得られる蓋然性があったとして、症状固定日までの約300日間の合計額約792万円の概ね7割に相当する555万円の休業損害を認めた事案(さいたま地裁平成30年1月17日判決)
- 被害者が行使する自賠法16条1項に基づく請求権の額と、労災補償法12条の4第1項に基づき国に移転し行使される上記請求権の合計額が、自賠責保険の保険金額を超える場合、被害者は国に優先して損害賠償額の支払いを受けられると判断した事案(最判平成30年9月27日)