事故により右大腿近位外側に皮下組織の損傷による皮膚の陥凹と色素沈着の残存、組織隆起等を残して症状固定となったメディアで活躍できるモデル等の仕事を将来の希望としていた被害者(女性・17歳)の後遺障害慰謝料について、同症状は、後遺障害等級14級5号に該当しないと認定しつつ、その大きさはそれなりに大きいこと、隆起が第三者からも認識可能であること、被害者の年齢、性別、将来の希望等を含め心理的負担を与えるなど事情を総合考慮して20万円の慰謝料を認めた事案(大阪地裁平成30年2月27日判決)
事故により右大腿近位外側に皮下組織の損傷による皮膚の陥凹と色素沈着の残存、組織隆起等を残して症状固定となったメディアで活躍できるモデル等の仕事を将来の希望としていた被害者(女性・17歳)の後遺障害慰謝料について、同症状は、後遺障害等級14級5号に該当しないと認定しつつ、その大きさはそれなりに大きいこと、隆起が第三者からも認識可能であること、被害者の年齢、性別、将来の希望等を含め心理的負担を与えるなど事情を総合考慮して20万円の慰謝料を認めた事案(大阪地裁平成30年2月27日判決)
事案の概要
事故により右大腿近位外側に皮下組織の損傷による皮膚の陥凹と色素沈着の残存、組織隆起等を残して症状固定となったメディアで活躍できるモデル等の仕事を将来の希望としていた被害者(女性・17歳)の後遺障害慰謝料について、同症状は、後遺障害等級14級5号に該当しないと認定しつつ、その大きさはそれなりに大きいこと、隆起が第三者からも認識可能であること、被害者の年齢、性別、将来の希望等を含め心理的負担を与えるなど事情を総合考慮して20万円の慰謝料を認めた事案(大阪地裁平成30年2月27日判決)
被告が運転するタクシーが、乗客を降車させるため、左側後部座席ドアを開けた際、同ドアが、ちょうど自転車を走行して運転していた被害者(原告)に衝突した交通事故(以下「本件事故」という。)にて、被害者は右大腿打撲・擦過傷、右大腿部皮下血腫などの傷病名で通院を余儀なくされました。そして、症状固定後、右大腿近位外側に皮下組織の損傷による皮膚の陥凹と色素沈着の残存、組織隆起等(以下「本件隆起等」という。)の後遺障害を残しました。
被害者は、これは自賠責後遺障害14級5号に該当すると主張しましたが、自賠責保険は、本件隆起等について、その存在は認められるものの隆起のみではなく、瘢痕を残す場合にのみ「酷いあとを残すもの」に該当するとして最終的に自賠責保険にいう後遺障害には該当しないと判断しました。
しかし、裁判所は、本件隆起等は、瘢痕や線状痕ではないから自賠責保険にいう14級5号には該当しないとはいえ、その大きさは、それなりに大きく、見る角度によっては第三者からも隆起していることは認識可能である。また、身に着ける衣服の形状によっては、そのほとんどが露出することになる。かかる本件隆起等の形状及び存在部位に加え、被害者の年齢、性別、将来の希望等をも踏まえれば、本件隆起等が残存したことが被害者に心理的負担を与えるであろうことは否定できない。しかし、被害者は再び、レッスンやオーディションを受けるなどして将来の希望を叶えるべく努力しているところ、これまでオーディションにおいて本件隆起等を指摘されたことはないなどの事情もあるから、これらを総合して考慮すれば、本件隆起等が残存したことによる精神的苦痛を慰藉するための金額は20万円が相当であるとしました。
一般に、後遺障害慰謝料について、自賠責保険にいう後遺障害等級に該当すると、その等級毎に、慰謝料の金額が算定されることになります。重篤な等級に該当すれば、その分慰謝料の金額は増額されます。
この点、自賠責保険の後遺障害等級に該当しない限り、損害賠償請求の民事裁判においても後遺障害慰謝料は認められないと考えがちですが、必ずしもそうではありません。理由は、裁判所は、自賠責の判断に拘束されないためです。自賠責の後遺障害に該当しないとの判断がされた場合でも、例えば裁判所が後遺障害等級14級に相当するなどと判断して、後遺障害慰謝料などを認定することは十分あり得ます。自賠責保険に認定されなかったといってもそこで諦めるのではなく、裁判所において、主張立証を尽くすことで道が開けることもあります。
今回の事案もその一つの事例判断として参考になるため、ご紹介させていただきました。
- 逸失利益の定期金賠償を認めた事例(最高裁判所令和2年7月9日第一小法廷判決)
- 被害者(女性・80歳・主婦)の逸失利益について、夫と二人暮らし、夫の身の回りの世話をしていたとして家事従事者と認めた裁判例(大阪地裁平成30年7月5日)
- 左目の失明により運動能力が低下し、もとの持病が悪化した結果、右足膝下切断となった事案で、失明だけでなく切断との因果関係を肯定した裁判例(東京高裁平成30年7月17日)
- 評価損として、損傷の部位・程度を考慮し修理費の30%相当額を認めた裁判例
- 被害者の主張する代車費用を認めた事案(大阪地裁平成30年7月26日判決)
- 信号機による交通整理の行われている交差点において,右折合図することなく右折しようとした加害者(タクシー)と,対面信号機の青色表示に従って対向直進した被害者(原動機付自転車)とが衝突した事故において,被害者にも低速で右折を開始している加害者の動静に注視し,その安全を確認して進行すべき義務を怠った過失がないとはいえないとして,過失割合を,被害者側5%,加害者側95%と認めた事案(東京地裁平成30年5月9日判決)
- 事故により右大腿近位外側に皮下組織の損傷による皮膚の陥凹と色素沈着の残存、組織隆起等を残して症状固定となったメディアで活躍できるモデル等の仕事を将来の希望としていた被害者(女性・17歳)の後遺障害慰謝料について、同症状は、後遺障害等級14級5号に該当しないと認定しつつ、その大きさはそれなりに大きいこと、隆起が第三者からも認識可能であること、被害者の年齢、性別、将来の希望等を含め心理的負担を与えるなど事情を総合考慮して20万円の慰謝料を認めた事案(大阪地裁平成30年2月27日判決)
- 追突事故の受傷(頚椎捻挫など)により交通事故直後に予定されていた2件の国際ピアノコンクールへの出場を断念せざるを得なかった被害者(26歳・女性・ピアニスト)の慰謝料について、被害者の経歴や各コンクールで入賞するために努力を継続した事情に鑑みると、被害者の慰謝料算定において十分考慮すべき事情であるした事案(東京地裁平成30年1月29日判決)
- 交通事故の被害に遭う前日に月給70万円とする雇用契約を締結した男性被害者が,交通事故により頚椎捻挫,腰椎捻挫などの傷害を負った場合に,事故前3年間の事業所得が約20万円、0円、105万だったことを考慮してもなお、雇用契約相当の収入を得られる蓋然性があったとして、症状固定日までの約300日間の合計額約792万円の概ね7割に相当する555万円の休業損害を認めた事案(さいたま地裁平成30年1月17日判決)
- 被害者が行使する自賠法16条1項に基づく請求権の額と、労災補償法12条の4第1項に基づき国に移転し行使される上記請求権の合計額が、自賠責保険の保険金額を超える場合、被害者は国に優先して損害賠償額の支払いを受けられると判断した事案(最判平成30年9月27日)