288 嗅覚の脱失
嗅覚の脱失は、殆どが頭部外傷後の高次脳機能障害、特に、前頭葉の損傷で発症しています。
嗅覚脱失における後遺障害のポイント
1)T&Tオルファクトメータ検査で立証、検査結果は、オルファクトグラムで表示されます。
バラの香り、焦げた匂い、腐敗臭、甘い香り、糞の臭い、5種類の匂いを嗅がせ、濃淡0~5まで段階で評価します。特に腐敗臭では、検査室に同席していると、強烈に臭ってきますが、嗅覚の脱失では、この強烈な臭いを感じることができません。
認知域値の平均嗅力損失値で、5.6 以上は、嗅覚脱失で12級相当が認定されています。
2.6~ 5.5 以下は、嗅覚の減退と判断、14級相当が認定されます。
2)アリナミンPテスト
もう一つの、静脈性嗅覚検査と呼ばれる、嗅覚障害の有無や程度を調べる検査です。
ニンニク臭を感じるようになる注射液を静脈に注射し、ニンニク臭を感じ始めてから消えるまでの時間を測定するもので、注射液が静脈から肺に流れ、それが呼気に排出され、後鼻孔から嗅裂に達し刺激臭になるのですが、この注射開始から臭いの感覚が生じるまでの時間を潜伏時間、臭いの感覚が起きてから消えるまでの時間を持続時間として、その間隔を開始〇秒、消失〇秒として測定します。
アリナミンPテスト、プルスチルアミンとはニンニクとビタミンB1の化合によりできるもので、市販されているビタミン剤には含まれています。
他に、アリナミンFテストがあります。
フルスルチアミンというビタミンB1誘導体で、多くのアリナミン剤の主成分です。
このフルスルチアミンを使った検査は、調査事務所、労災は排除しています。
ポイントは、アリナミンPテストは、嗅覚がまったくダメになったか、嗅覚を感じるまでの反応が鈍くなったことを解明するにとどまることです。
つまり、12級か非該当のどちらかの評価しか、できないのです。
その点、T&Tオルファクトメータは、臭いの種別と程度を数値化できますので、12級、14級に加え、非該当の評価が可能であり、この検査を選択すれば、それらの問題は生じません。
T&Tオルファクトメーター検査数値の見方について
嗅覚の検査ではお馴染みの検査キットです。
嗅党の検査では、他に静脈注射のアリナミンPテストがありますが、しかし、どんな臭いが? どれくらい臭わなくなったか? これらを明らかにするには、T&Tオルファクトメーター検査が必要です。
12級、14級、もしくは非該当を判定することができます。
※検査手順
①検査者は、ニオイ紙の一端を持ち、他端を1cm嗅覚測定用基準臭の中に浸してから、被検者に手渡し、被検者は、基準臭のついたニオイ紙の先端を鼻先約1cmに近付けて臭いを嗅ぎます。
②臭いを感じた濃度1~5(○)、どんな感じの臭い、分かった濃度で1~5(×)、そして判定不能5~(↓)を判定できるまで、一段、一段、濃度を強くしていきます。
※表の見方
検知域値(臭いが分かる==○
認知域値(臭いを区別できる)=×
スケールアウト、全く臭わない、測定不能=↓
これらの3つを記録します。
薬品の濃度は8段階、正常値の臭いの濃度は、2~0で、濃度は最高5まで。
1段階上がるごとに臭いの濃さは10倍になります。
認知域値は検知域値と同じか1段階上のことが多く、3つ以上乖離しているときは、重度の脳中枢障害の可能性が予想されます。
※数値の計算方法
嗅覚障害者が生活上での困窮するのは、臭いがしないこと、臭いが区別できないことです。
したがつて、判定には認知域値を用います。
最高濃度5でも認知不能のときは、それぞれ最高濃度に1を加えて6として計算します。
※ ただし、B焦臭のみ、4が認知できないときは、5を最高として計算します。
(A+B+C+D+E)÷5=数値
※後遺障害等級の判定
労災保険、自賠責保険では以下の基準で等級を測ります。
数値5.6以上は、嗅覚脱失と判定され、12級相当、
数値2.6以上5.5以下は、嗅覚の減退と判定され、14級相当、
T&Tオルファクトメータ検査結果は、オルファクトグラムで表示され、発行されています。
そこには、○検知域値、×認知域値、↓スケールアウトが表示されているだけで、数値や等級が記載されているのではありません。表の見方、計算方法を知っておかないと等級にたどり着けません。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。