269 外傷性黄斑円孔(がいしょうせいおうはんえんこう)

最近、IPS細胞による治療で話題となっているものに、加齢黄斑変性があります。

加齢黄斑変性とは、年齢を重ねることで網膜色素上皮下に老廃物が溜まり、その結果、黄斑部が障害されて、徐々に失明する病気です。

 

私たちの眼は、注目したところはよく見えるのですが、それ以外の周りの部分はぼんやりとしか見えない構造となっています。

カメラのフィルムに相当する網膜ですが、その中心部分を黄斑と呼び、視力をつかさどる最も重要な神経細胞が集合しています。

黄斑部では、モノの形、大きさ、色、立体性、距離などの光の情報の大半を識別しています。

 

さて、外傷性黄斑円孔とは、網膜の中心である黄斑部に穴が開いてしまう外傷です。

交通事故では、自転車、バイクの運転者の眼球打撲で発症しています。

黄斑部に完全な穴が形成されると、視力は矯正しても0.1前後に低下し、視野の中心が見えにくくなります。

 

 

3次元眼底像撮影、OCT検査により、確定診断がなされます。

 

 

外傷性黄斑円孔における後遺障害のポイント

1)外傷の程度、黄斑円孔の大きさ、発症後の経過期間が治療成績に影響を与えます。
黄斑円孔発症後の経過期間が短いほど、また円孔の大きさが小さいほど閉鎖率も高く、視力の予後も良いとされているようです。

2)外傷による損傷、黄斑円孔が大きいときは、初回のオペで円孔を閉鎖できないことがあり、再オペとなりますが、視力低下などの後遺障害を残すことが予想されます。

3)外傷による損傷、黄斑円孔が大きいときは、将来に白内障を発症する可能性を残します。
示談書には、将来発症した白内障については、別途賠償を行うことを挿入します。

4)視力が低下したときは、
眼の直接の外傷による視力障害は、前眼部・中間透光体・眼底部の検査で立証します。

 

 

スリット検査    直像鏡

前眼部と中間透光体の異常は、スリット検査で調べます。

眼底部の異常は、直像鏡で検査します。

 

視力検査は先ず、オートレフで裸眼の正確な状態を検査します。

例えば、水晶体に外傷性の異常があれば、エラーで表示されるのです。

その後、万国式試視力検査で裸眼視力と矯正視力を計測します。

 

オートレフ

 

前眼部・中間透光体・眼底部に器質的損傷が認められるとき、つまり、眼の直接の外傷は、先の検査結果を添付すれば後遺障害診断は完了します。

 

 

 

 

 

 

 

この記事を書いた人

弁護士法人江原総合法律事務所

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