137 足根骨の骨折 踵骨(しょうこつ)骨折
踵骨骨折は、大きく分類すると、以下の2つです。 ①捻挫や反復動作の外力と靱帯の張力が作用して発症するもの、 ②高所からの転落などで、踵を強く突いたときの外力により発症するもの、 ①は踵骨前方突起骨折で説明を終えています。 ここでは、②転落などによる衝突・圧迫型の骨折を解説します。
踵骨(しょうこつ)とは、かかとの骨で、直接、地面に接して体重を支えています。
足根骨の中で最も大きく、不整な四角形であり、かかとの突出は、この骨の隆起によるものです。
踵骨は硬い皮質骨の殻のなかに、スポンジのような軟らかい骨、海綿骨が詰まっています。
例えれば、和菓子のモナカの構造によく似ているのです。
高所からの転落で、モナカを踏み潰したように骨折し、踵骨上面の関節面が落ち込むのです。
結果、踵骨の上に位置する距骨との関節が転位し、踵が幅広く、高さが低く変形するのです。
骨折は、主にかかとの後面からの衝撃で発症する陥没型骨折と、かかとの下面からの衝撃で発症する舌状型骨折があります。距骨の突起部が舌のように見えることから、このように呼ばれています。
関節陥没型
舌状型
骨折線は関節面におよぶことが多く、転位を残したままでは重度の機能障害を生じます。
踵骨全体像もケーキを押しつぶしたようにペシャンコになり、疼痛や扁平足などにより重篤な歩行障害を残すことが多く、治療が長期化し、非常に厄介な骨折です。
下方に向かって骨折するもの、踵骨後方へ向かって水平に骨折するものがあります。
転位のないもの、転位が小さく徒手整復が可能なものは、4~6週のギプス固定となります。
一方転位があって、徒手整復が困難なときは、オペによる整復と固定が実施されています。
転位とは、距踵関節部でずれることです。
この骨折の形状では、オペによる整復と固定が実施されています。
骨癒合を完了しても、痛みや腫れが改善しないことが多く、骨癒合後のケアに苦労します。
疼痛や腫脹が消失するまで2~3年を要する症例も非常に多く見られます。
また、粉砕骨折や後距踵関節に骨折線がおよんでいる症例では、確実に後遺障害を遺残します。
外傷後関節症などで変形を生ずると強い疼痛や歩行障害が残存します。
こんなときは、関節固定術のオペが選択されています。
踵骨骨折における後遺障害のポイント
1)踵骨骨折では、骨折部の疼痛が後遺障害の対象となります。
症状としては、歩行時の痛み、坂道や凸凹道の歩行や長時間の立位が困難なこと、高所での作業が不可能であることが代表的です。
この状態が2年以上続くこともあり、骨癒合完了時以降、どのタイミングで、症状固定とするかは難しい問題です。事務職であれば、問題を残しませんが、営業職や現業職では就労復帰が遅れます。
当面の配置転換が可能であれば、この問題はクリアーできますが、全員がそうではありません。
XP、CTで骨折後の骨癒合状況を立証すれば、12級13号が認定される可能性があります。
①これ以外には、ベーラー角度の減少による外傷性偏平足があるかどうか
ベーラー角は、20~40°が正常ですが、健側と比較して問題提起をしています。
これもONISのソフトで計測できます。
②距踵関節面に、僅かでも変形が認められるかどうか
③MRIで、内外果の周囲の腱や靱帯、軟部組織に瘢痕性癒着が認められるかどうか
これらのチェックも必要です。
配置転換もなく、就労復帰が遅れていたとしても、受傷から2年も経てば、通常、症状固定として、治療費は、打ち切られます。
2)もう1つ、踵骨の骨折部にズディック骨萎縮が認められ、灼熱痛を訴え、車椅子状態で、就労復帰の見通しが、どうにも立たないことがあります。
これは単なる疼痛ではなく、複合性局所疼痛症候群、CRPSタイプⅡカウザルギーです。
カウザルギーを丹念に立証して、後遺障害等級を獲得しなければなりません。
3)踵骨の粉砕骨折、後距踵関節に骨折線がおよんでいる重症例では、歩行時の疼痛にとどまらず、足関節に大きな可動域制限を残します。
足関節の測定については、背屈と底屈の計測の他、必要に応じて内返し、外返し、回内、回外まで行います。
さらに、CTの3D撮影で、べーラー角の計測による縦アーチの崩壊、距踵関節面の変形、MRIで、内外果の周囲の腱や靱帯、軟部組織の瘢痕性癒着を医学的に立証できるかも検証します。
歩行時に足底板の装用を必要としているかも、等級獲得ではキーポイントです。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。