94 足根骨の骨折 距骨(きょこつ)骨折
距骨(きょこつ)は、踵骨の上方にあり、脛骨、腓骨と連結して足関節を形成しています。
距骨表面の80%は関節軟骨で覆われ、筋肉が付着していないこともあって、血流が乏しいのを特徴としています。
骨折では、血行障害となり、壊死・偽関節・関節症変化による機能障害を残すことが多いのです。
交通事故では、自転車やバイクVS自動車の衝突で、転倒時に、背屈を強制され、脛骨や腓骨に挟まって骨折することがほとんどですが、自動車を運転中に、センターラインオーバーの相手車を発見、急ブレーキをするも間に合わず正面衝突を受けた例で発症するケースもあります。
上図の①②であれば、壊死も考えにくく底屈位で整復後、10週間のギプス固定で改善に向かいます。
しかし、③④は距骨下関節の脱臼を伴っており、重傷です。
③は壊死の可能性が考えられ、④になると、壊死は決定的です。
いずれも整復固定術により強力に内固定を行い、術後、ギプス固定⇒PTB装具となります。
受傷後6週間を経過すればMRIや骨シンチグラフィー検査で壊死の診断が可能です。
Hawkins 兆候=軟骨下骨萎縮が認められれば、血液循環が保たれていると考えられます。
徐々に部分荷重を開始し、骨萎縮像が消失したら全荷重とします。
骨萎縮像を認めないときは、PTB装具で厳重な免荷と自動運動を実施、骨萎縮像の出現を待ちます。
平均的には、次の経過をたどります。
①2、3カ月でHawkins兆候の陽性=距骨滑車下の骨萎縮、
②4、5カ月で距骨の硬化像、PWB=部分荷重によるリハビリが開始されます。
③6カ月以降、骨梁の修復、様子を見てFWB=全荷重によるリハビリが開始されます。
※NWBは免荷、PWBは部分荷重、FWBは全荷重
下腿骨の骨折などで使用される装具であるPTB装具により、膝蓋骨で体重を支持しますので、足はNWB、宙に浮いている状態です。
両方が同じ高さでないと歩行ができないので、健足にも補高が付けられます。
ナカシマメディカル
最近では、上記の人工距骨も臨床で使われ始めているとのことです。
壊死が多く荷重時期が遅くなるのであれば、人工関節も十分選択の範囲内と思われます。
距骨骨折における後遺障害のポイント
1)症状固定時期
距骨の骨折では、足関節の可動域制限が後遺障害の対象です。
ところが、オペ後、理想的な経過をたどっても、FWBまでに6カ月ですから、その後のリハビリを含めると症状固定までに、8カ月~1年以上が予想されます。
被害者が事務職であれば、PWB=部分荷重で就労復帰が可能ですが、現業職で、当面の配置転換が不可能なときは、就労復帰まで休業損害を請求することになります。
この環境で、FWB=全荷重まで待ち、この間、足関節の可動域を計測し続けます。
2)人工距骨に置換したときは、10級11号の認定が想定されます。
3)無腐性壊死となり、足関節固定術が実施されたときは、8級7号が認定されます。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。