7 胸鎖関節脱臼(きょうさかんせつだっきゅう )
この症状も、バイクの事故等で、見られる症状の一つです。
胸鎖関節は、鎖骨近位端(体に近い方の骨の端です)が、胸骨と接する部分で、先に説明した肩鎖関節の反対に位置しています。 胸鎖関節は、衝突や墜落などで、肩や腕が、後方に引っ張られた際に、鎖骨近位端が、第1肋骨を支点として前方に脱臼すると言われています。
鎖骨の近位端部が、前方に飛び出していることが、裸体で確認できるような事案であれば、肩鎖関節脱臼と同じように、「鎖骨近位端の変形」(と痛み)で12級5号、右肩関節の機能障害で、12級6号が認定されれば、併合11級となります。
胸鎖関節脱臼における後遺障害のポイント
1)肩関節の可動域
リハビリ治療を続けることは大切ですが、どの時点で症状固定として後遺症の診断を受けるのかは、検討が必要です。
症状固定を前提とすると、その後の治療費は、保険会社が支払いませんし、訴訟等でも症状固定後の治療費は、事故とは因果関係の無い支出として、損害としては認められないのが原則です。
他方で、長期に渡ってリハビリを続けていった場合、認定される後遺症の等級に変化が生じる可能性もあります。 回復の余地がある限り治療は続けるべきであり、回復の余地があるのであれば、症状は未だ固定していないため、後遺症が認定されるのはおかしいということになりますが、この点は評価が難しいところです。
2) 肩関節から最も離れた鎖骨の部分(近位端)の脱臼で、どうして肩関節に機能障害を残すのでしょうか
骨と骨は、連動しています。鎖骨全体のCT等により、稼働時の鎖骨の走行に変化が生じていれば、肩関節に機能障害を来しても不思議ではありません。
肩関節は、上腕骨頭が肩甲関節に遠慮がちに寄り添う構造です。 肩甲骨は、鎖骨にぶら下がっている形状で、胸郭=肋骨の一部に乗っかっています。 つまり、肩鎖関節と胸鎖関節、肩甲骨の胸郭付着部は連動しており、胸鎖関節が脱臼したことにより、全体の動きに支障が生じることは十分にあり得る話しです。
3) 右鎖骨近位端の変形
胸鎖関節脱臼で鎖骨が突出するのは、○印の部分です。
胸鎖関節脱臼による変形も、外観により判断します。
骨は、肉に包まれているため、患部周囲の脂肪が厚すぎると、患部の異常が外観からは目立たなくなり、変形の有無が判断できなくなります。
同じ変形でも、痩せている人と、太っている人で、自賠責の認定においては、胸鎖関節部の突出変形の認定結果が異なる可能性があることは、考慮する必要があるでしょう。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。