椎骨脳底動脈血行不全症 (ついこつのうていどうみゃくけっこうふぜんしょう)

強い耳鳴り・難聴・眩暈の訴えをされる頚部捻挫の被害者におられます。

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椎骨動脈は鎖骨下動脈から分岐し第6頚椎から第1頚椎の横突孔を走行し、頭蓋内に流入、内耳・小脳・脳幹等の平衡感覚や聴覚に影響を持つ部位に血液を供給しているのです。

 

交通事故による椎骨動脈の直接の損傷、周囲からの圧迫、あるいは動脈壁に分布して血管の収縮・拡張を調整する頚部交感神経を損傷し、血液の流入先に血行障害を起こしたときは、耳鳴り・難聴・眩暈が発生しても不思議ではありません。

 

本来は、椎骨動脈造影検査で狭窄や圧迫が確認されて、この病名が立証されたことになるのですが、臨床では、被害者の訴えに眩暈、悪心、嘔吐、目のかすみ、上肢の痺れがあり、首を回転、過伸展したときに、これらの症状が出現するケースで、この傷病名が記載されることがあります。

 

椎骨動脈の血行障害は、動脈硬化による血管の狭窄、血栓による血管閉塞でも起こります。

軽度のものは、バレ・リュー症候群でも、交感神経異常として認められています。

 

交通事故では、頚椎椎体の骨挫傷、横突起や棘突起の骨折など、頚部に相当大きなダメージを受けたときに、この傷病名が予想されます。

通常の頚部捻挫で、椎骨脳底動脈血行不全症はあまり想定されません。

椎骨動脈造影検査では、動脈の一部が細くなっている、造影剤が見えなくなる所見が得られます。

 

椎骨脳底動脈血行不全症における後遺障害の後遺障害のポイント

 

1)椎骨脳底動脈血行不全症の立証は、神経内科における椎骨動脈造影検査で行います。

椎骨動脈の血流低下が立証されたときは、耳鼻科で失調・めまい・平衡機能障害の検査を受けて、めまいなどのレベルを立証します。

 

2)失調・眩暈及び平衡機能障害の後遺障害等級

 

失調・眩暈及び平衡機能障害の後遺障害等級

33 生命の維持に必要な身の回り処理の動作は可能であるが、高度の失調又は平衡機能障害のために終身労務に就くことができないもの、
52 著しい失調又は平衡機能障害のために、労働能力が極めて低下し一般平均人の4分の1 程度しか残されていないもの、
74 中程度の失調または平衡機能障害のために、労働能力が一般平均人の 2 分の 1 以下程度に明らかに低下しているもの、
910 一般的な労働能力は残存しているが、眩暈の自覚症状が強く、かつ、他覚的に眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められるもの、
1213 労働には差し支えがないが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの、
149 眩暈の自覚症状はあるが、他覚的には眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められないもので、単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの、

 

3)自賠責調査事務所は、頭部外傷を原因とした失調・眩暈および平衡機能障害を後遺障害の対象としています。

ところが、椎骨脳底動脈血行不全症は、頚部の外傷であり、上記からは外れているのです。

本部稟議で協議の対象となりますが、非該当の結論も予想されます。このような場合には、訴訟による解決を選択することになります。

 

この記事を書いた人

弁護士法人江原総合法律事務所

埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。

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