168 尺骨鉤状突起骨折 (しゃくこつこうじょうとっきこっせつ)
上腕骨遠位端部を尺骨が受け入れる形状で、肘関節は構成されています。
交通事故では、転倒、手を突いての骨折では、尺骨の鉤状突起骨折を発症することが多いのです。
尺骨鉤状突起骨折は、主として肘の脱臼に合併、若しくは肘関節を脱臼するほどの外力を受けた際に上腕骨の関節面=上腕骨滑車と尺骨の鉤状突起が衝突して骨折しています。
GradeⅠ 鉤状突起先端部の剥離骨折
GradeⅡ 25%以上50%以下、骨片に関節包と上腕筋の一部が剥がれたもの、
GradeⅢ 50%以上、上腕筋と内側側副靱帯が剥がれたもの、
鉤状突起には、前方関節包、上腕筋、内側側副靱帯の軟部組織が付着しており、肘関節の安定に寄与しているのですが、GradeⅡ25%以上の骨折から、肘関節は不安定を示すので、オペが選択されています。
重症例は、鉤状突起骨折に、肘関節後方脱臼と橈骨頭骨折を合併したものです。
橈骨頭・頚部骨折、肘関節脱臼、肘頭骨折、尺骨鉤状突起骨折における後遺障害の後遺障害のポイント
1)いずれの傷病名であっても、単独損傷、そして、受傷直後に適切な診断と治療が行われていれば、後遺障害を残すことなく改善が得られています。
2)不完全な徒手整復と長期のギプス固定が選択されると、肘関節の拘縮を生じるケースがあります。
転位の少ない鈎状突起骨折では、保存治療が選択されるのですが、最初の2週間は、肘関節90度でギプスシーネ固定がなされます。
そして、受傷後1週の段階で、支柱付きの肘関節装具の採型を行い、さらに、装具には伸展制限のストッパーをオプションで追加しておきます。
2週間が経過、ギプスシーネの除去後は、この装具を3カ月間、装用させます。
当初は鈎状突起の転位を防ぐために、最初は屈曲45~60°までの伸展制限をつけ、段階的に伸展制限を軽減し、最終的には受傷後6週で伸展制限を解除します。
肘関節を長期間固定すると、鈎状突起は良好に骨癒合するのですが、肘関節に高度の拘縮、可動域制限を残すことがあります。
骨癒合は3DCTで明らかにし変形癒合を立証します。拘縮は、ギプス固定期間を診断書からピックアップし、陳述書にまとめます。
動揺関節では、装具の発注と、ストレスXP写真で立証します。
3)合併損傷であれば、理想的な治療であっても、ほぼ確実に後遺障害を残します。
本件の後遺障害は、肘関節の機能障害、神経麻痺、動揺関節、痛みの神経症状です。
機能障害では、骨癒合が決め手となるので、必ず、3DCTで360°回転させて検証します。
神経麻痺では、神経伝達速度検査、針筋電図検査で立証します。
さらに、神経麻痺では、自分で動かすことができないが、他動値は正常であることを理解しておかなければなりません。
最後に、動揺関節は、ストレスXP撮影で立証します。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。