119 下腿のコンパートメント症候群

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上・下肢の筋肉、血管や神経組織は、筋膜や骨間膜に囲まれており、この閉鎖された空間、構造をコンパートメント、あるいは筋区画と呼んでいます。
下腿には、イラストで示すように、前部、外側、深後部、浅後部の4つのコンパートメントがあります。

※参考までに、前腕部のコンパートメントは、屈筋群、伸筋群、橈側伸筋群の3つです。
前腕部に生じたものは、コンパートメント症候群ではなく、フォルクマン拘縮と呼ばれています。
前腕部では、屈筋群が非可逆性壊死に陥り、その末梢に拘縮や麻痺を生じることが多いのです。

交通事故による大きな衝撃で、この内部に出血が起きると内圧が上昇し、細動脈を圧迫・閉塞、筋肉や神経に血液が送れなくなり循環不全が発生し、筋・腱・神経組織は壊死状態となります。 この状態が長く続くと、元に戻らなくなってしまいます。
元に戻らなくなることを、医学の世界では、非可逆性変化と言います。
脛骨々幹部骨折に合併して、コンパートメント症候群を発症することがあります。

下腿のコンパートメント症候群では、前脛骨筋、足の親指を伸ばす筋肉である長母趾伸筋、前脛骨動静脈・腓骨神経が障害を受けるのです。

①puffiness=著明な腫れ、
②pain=疼痛、
③pulselessness=動脈拍動の減少ないし消失、
④pallor=四肢の蒼白、
⑤paralysis=知覚異常、

これら5つのPが認められれば、コンパートメント症候群です。
初期症状を説明しましたが、最終的には、筋肉が拘縮してしまいます。

治療では、ただちに筋膜の切開、血腫の除去が実施されます。
安静や下腿を上にあげたりしますが、フォルクマン拘縮と同じく、一度コンパートメント 症候群が進み、筋肉の壊死までなってしまうと、基本的には治療法はありません。
あくまでも、発生予防を心がけることになります。

 

下腿のコンパートメント症候群における後遺障害のポイント

 

1)脛・腓骨々骨幹部開放性骨折など、オペによる内固定がなされたときは、コンパートメント症候群を発症することは滅多にないようです。

注意を要するのは、脛・腓骨の閉鎖性骨折で転位が少ないときです。
非開放性で、転位のないときは、整復の上、ギプス固定がなされます。
被害者が下腿の疼痛を訴えるも、鎮痛消炎剤の投与で見過ごされたときは、時間の経過にしたがって、深刻な症状を来します。

 

この記事を書いた人

弁護士法人江原総合法律事務所

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