255 角膜穿孔外傷 (かくまくせんこうがいしょう)
交通事故では、バイクの運転者が転倒した際に、眼に対する強い打撲や、ガラスやプラスティック片、金属片などが、目に突き刺さることで発症しています。
自動車事故であっても、横転、崖下落下などでは、フロントガラスや眼鏡の破損により発生します。
飛来異物、裂傷などにより、眼球に穿孔創=孔が開いた外傷を角膜穿孔外傷呼んでいます。
眼球に穿孔を生じると水晶体や硝子体、網膜、脈絡膜などの眼内組織が損傷し、重い合併症を生じることがあります。
受傷直後から、眼の疼痛、角膜損傷、前房・硝子体出血、硝子体混濁、低眼圧などを原因とした急激な視力障害の症状が現れます。
眼内異物が疑われたときは、異物を発見する必要から、超音波検査、XP、CTなどの画像診断が実施されています。また眼内組織の損傷レベルを知るために、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査などの一般的な眼科検査以外に、超音波検査、ERG検査なども行われています。
※細隙灯顕微鏡検査 (さいげきとうけんびきょうけんさ)
細隙灯顕微鏡によりスリットランプを当てて眼球を観察する生体検査で、視力、眼圧、眼底とともに、基本的かつ重要な検査です。
検査は、細隙灯というスリットランプからの細い光で眼球の各部を照らし、それを顕微鏡で拡大して見分、結膜、涙点から角膜、前房、虹彩、瞳孔、水晶体、硝子体などの組織を観察し、肉眼では分からない眼球内の異常を見つけ出します。
角膜穿孔外傷における後遺障害のポイント
本件では、眼球の障害による視力の低下が後遺障害となります。
視力障害では、頭部外傷による視神経損傷と、眼球の外傷を原因とするものに大別できるのですが、ここでは、眼球の外傷を原因とするものに限定して説明を加えます。
1)視力低下の立証について
視力は、万国式試視力表で検査します。
等級表で説明する視力とは、裸眼視力ではなく、矯正視力のことです。
矯正視力とは、眼鏡、コンタクトレンズ、眼内レンズ等の装用で得られた視力のことですが、角膜損傷などにより、眼鏡による矯正が不可能で、コンタクトレンズに限り矯正ができるときは、裸眼視力で後遺障害等級が認定されています。
失明とは眼球を失ったもの、明暗を区別できないもの、ようやく明暗を区別できるもの、つまり矯正された視力で0.01未満を言います。
両眼の視力障害は、等級表の両眼の項目で認定します。
1眼ごとに等級を決めて併合は行いません、この点、注意が必要です。
例外もあります。
1眼の視力が0.6、他眼の視力が0.02の場合は両眼の視力障害として捉えれば9級1号となりますが、1眼の視力障害とすれば、8級1号に該当します。
このケースでは8級1号を認定しています。
イラストは手動弁と指数弁を表示しています。
手動弁とは、被害者の眼前で手を上下左右に動かし、動きの方向を弁別できる能力を言います。
指数弁とは、被害者に指の数を答えさせ、距離によって視力を表します。
1m/指数弁=視力0.02、50cm/指数弁=視力0.01に相当します。
暗室において被害者の眼前で照明を点滅、明暗を弁別させる光覚弁(明暗弁)がありますが、いずれも失明の検査となります。
2)視神経損傷と、眼球の外傷の立証について
眼の直接の外傷による視力障害は、前眼部・中間透光体・眼底部の検査で立証します。
スリット検査 直像鏡
前眼部と中間透光体の異常は、スリット検査で調べます。
眼底部の異常は、直像鏡で検査します。
視力検査は先ず、オートレフで裸眼の正確な状態を検査します。
例えば、水晶体に外傷性の異常があれば、エラーで表示されるのです。
その後、万国式試視力検査で裸眼視力と矯正視力を計測します。
オートレフ
前眼部・中間透光体・眼底部に器質的損傷が認められるとき、つまり、眼の直接の外傷は、先の検査結果を添付すれば後遺障害診断は完了します。
これらで明らかな異常所見が認められないときは電気生理学的検査、ERG(electroretinogram)を受けなければなりません。
ERG
ERGは網膜電位と訳すのですが、網膜に光刺激を与えたときに現れる網膜の活動電位をグラフにして記録したものです。
最後に、視覚誘発電位検査、VEP(visual evoked potentials)です。
これは眼球の外傷ではなく、視神経損傷が疑われるときの検査で、網膜から後頭葉に至る視覚伝達路の異常をチェックします。光刺激によって後頭葉の脳波を誘発し記録します。
VEP
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。