248 外傷性眼瞼下垂 (がいしょうせいがんけんかすい)
眼瞼挙筋は、まぶたや眼球の運動に関わる動眼神経が支配しており、自分の意志でまぶたを開けたり閉じたりすることができる筋肉です。
ミュラー筋は自律神経が支配しており、自分の意志で動かすことはできません。
また、額の筋肉の前頭筋も眉毛を上げる作用があります。
眼瞼下垂などで、まぶたが開けにくい状態では、前頭筋を使ってまぶたを上げることが癖となり、額のしわが深くなります。
外傷性の眼瞼下垂は、腱膜性眼瞼下垂と呼ばれるものと動眼神経麻痺の2つに分類されます。
腱膜性眼瞼下垂は、挙筋腱膜の断裂や瞼板との付着部分が分離するなどにより、瞼板を正しく持ち上げることができず、まぶたが開きづらくなっている状態です。
上まぶたが下垂し、まぶたが開きにくくなることで、物が見えにくい状態を眼瞼下垂と呼び、先に説明の、まぶたの切創=裂傷で、眼瞼挙筋や挙筋腱膜を損傷することでも発症します。
まぶたの欠損、まぶたの運動障害による後遺障害の後遺症害のポイント
1)まぶたの欠損
交通事故によるまぶたの切創=裂傷では、縫合や形成術を行っても、著しい欠損を残すことが予想されるのです。
①まぶたの欠損により、まぶたを閉じたときに角膜を完全に覆うことができないものは、まぶたに著しい欠損を残すものとして、単眼で11級3号が、両眼で9級4号が認定されています。
②まぶたを閉じれば角膜は完全に覆うことができるが、白目が露出する状況では、まぶたの一部に欠損を残すものとして、単眼で14級1号が、両眼で13級4号が認定されます。
瞼の欠損は、外貌の醜状障害としても捉えることができます。
両方の観点から進め、いずれか、上位の等級が認定されています。
2)まぶたの運動障害
まぶたの運動障害は、顔面や側頭部の強打で、視神経や外眼筋が損傷されたときに発症します。
ホルネル症候群、動眼神経麻痺、眼瞼外傷による上眼瞼挙筋損傷、外転神経麻痺が代表的な傷病名となります。
まぶたには、
※まぶたを閉じる=眼瞼閉鎖、
※まぶたを開ける=眼瞼挙上、
※瞬き=瞬目運動
以上の3つの運動があり、後遺障害である、まぶたに著しい運動障害を残すものとは、瞼を閉じたときに、角膜を完全に覆えないもので、兎眼と呼ばれています。
同じく、まぶたを開いたときに、瞳孔を覆うもので、これは、眼瞼下垂と呼ばれています。
単眼で12級2号、両眼で11級2号が認定されますが、男女とも、相当に深刻です。
※偽眼瞼下垂
65歳以上の高齢者では、眼瞼下垂と思われても、実は、まぶたの皮膚だけが緩んで下がっている眼瞼皮膚弛緩症や、前額部の皮膚や筋の弛緩により眉毛が下がりまぶたを押し下げている眉毛下垂といった老人性のたるみがほとんどです。
これは、歳のせいで、後遺障害の対象ではなく、真の眼瞼下垂とは区別しなければなりません。
どうしても見えにくいのであれば、皮膚の切除や眉毛の吊上げのオペが選択され、回復が見込めるのです。
※兎眼
外傷や顔面神経麻痺などにより、まぶたを完全に閉じることができず、眼球表面が露出している状態を兎眼と呼びます。
昔、兎は目を開いたまま眠ると信じられており、兎眼と呼ばれるようになりました。
放置しておけば、角膜と結膜が乾いて強いドライアイになります。
重症では、角膜の炎症や潰瘍が進行して、視力を失うことも予想されます。
眼球がまぶたに覆われ、乾かないように修復術が行われています。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。