237 尿道の外傷
①振子部尿道と②球部尿道は、前部尿道、
③膜様部尿道と④前立腺部尿道は、後部尿道と呼んでいます。
尿道外傷は、男性に圧倒的で、挫傷、部分的破裂、完全破裂の3つに分類されています。
後部尿道の外傷は、骨盤骨折に合併することがほとんどで、前部尿道の外傷は、会陰のまたがり損傷=騎乗型損傷に起因することが多いと報告されています。
合併症には、尿道の狭窄、感染症、勃起不全や失禁などがあります。
尿道口からの出血が、最も重要な尿道外傷の徴候であり、この他の徴候としては、会陰、陰嚢、陰茎の斑状出血、浮腫、直腸内診で確認される前立腺の高位浮遊などがあります。
逆行性尿路造影法により確定診断がなされています。
※騎乗型損傷
またがり損傷とも呼ばれ、なにか、硬いもので股間=会陰部を打撲することで発症します。
恥骨との間で球部尿道が挫滅し、挫滅した尿道は線維化、瘢痕化を起こし、高い確率で球部尿道狭窄症を発症するようです。
自転車のサドルで、鉄棒やフェンスに跨がろうとして誤って手足を滑らせて会陰部を強打、風呂場や温泉で湯船に入る際に足を滑らせて会陰部を打撲、これらが、典型的な受傷のパターンです。
※骨盤骨折に伴う後部尿道外傷
後部尿道外傷は、交通事故によって起こる骨盤骨折の10%に認められると報告されています。
尿道は膜様部で骨盤に固定されているのですが、骨盤が左右から圧迫される、捻るような大きな力が加わると後部尿道が断裂してしまうのです。
尿道外傷は、挫傷、部分的破裂、完全破裂の3つに分類されています。
挫傷であれば、経尿道カテーテルの留置により、後遺障害を残すことなく改善が得られているようです。
部分的破裂では、恥骨上カテーテル留置による治療が最善とされているようです。
後部尿道の部分破裂、完全破裂では、一時的に尿道瘻が形成されますが、3~6カ月後には、尿道形成術が選択され、後遺障害を残すことなく改善が得られているようです。
もちろん、交通事故では、重篤な不可逆的損傷も予想されるところから、尿道損傷に伴う排尿障害についても個別的に検証していかなければなりません。
尿道外傷における後遺障害の後遺症害のポイント
1)排尿の機能障害
排尿とは、貯留した尿を意図的に排出することであり、排尿機能障害は、排尿困難、残尿感あるいは尿閉などの症状として出現します。
①高度の排尿障害が認められるものは9級11号が認定されます。
高度の排尿障害とは、残尿が100ml以上であることが超音波画像検査=ウロダイナミクス検査で立証されていることを意味しています。
②中等度の排尿障害が認められるものは11級10号が認定されます。
中等度の排尿障害とは、残尿が50ml以上100ml未満であることが、超音波画像検査=ウロダイナミクス検査で立証されていることを意味しています。
尿道狭窄のため、糸状プジーを必要とするもの、
③尿道狭窄のため、糸状プジー第20番が辛うじて通り、ときどき拡張術を行う必要のあるものは、準用により14級相当が認定されています。
※糸状(しじょう)プジー
金属製、ゴム製などの細い管または棒で、主として尿道などの狭い体管腔に挿入、狭窄部分の拡張を行う目的で使用されている医療器具です。
糸状ブジーは、尿道狭窄により、カテーテルが入れられず、拡張が必要なときに使うもので、糸のように細いブジーを先に通しておき、それに金属カテーテルを接続して挿入しています。
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。