68 腰部脊柱管狭窄症
脊髄が走行している脊柱管のトンネルが狭くなり、脊髄や神経根が圧迫されている病気・疾患を脊柱管狭窄症と言い、狭窄の原因は、先天性の骨形成不全、後天的なものとしては椎間板ヘルニア、分離・すべり症、加齢にともなう椎間板、椎体、椎間関節や椎弓の退行性変性、軟部組織の肥厚によるものであり、そのためか、負担のかかる腰部に多く発症しています。 いずれにしても、交通事故外傷で脊柱管が狭窄することは通常ありません。
神経が圧迫されることで、狭窄のある部分の痛みや、下肢の痛み、しびれなどが出現します。
腰部の脊柱管狭窄の特徴的な症状として、歩いたり立ち続けたりしていると、下肢に痛みやしびれが出て歩けなくなり、暫く休むと、症状が無くなるといった状態を繰り返す、間欠性跛行があります。
神経根が障害されると、下肢や臀部の痛み、しびれが、馬尾神経では、下肢や臀部にしびれ・だるさ感があり、頻尿などの排尿障害や排便障害をきたすこともあります。
頚部や胸部、腰部におよぶ広範脊柱管狭窄症では、四肢や体幹の痛み、しびれ、筋力低下、四肢の運動障 害、間欠性跛行や排尿障害、排便障害をきたすことがあります。
確定診断はMRI画像で行われています。
各椎体の後方には、日本人の平均で前後径、約15mmの脊柱管があり、脊髄はこの中を走行していますが、基準として前後径が12mmになり、症状が出現していれば、脊柱管狭窄症と診断されます。
保存療法では症状が改善しないとき等には、手術が行われます。
腰部脊柱管狭窄症における後遺障害のポイント
1)腰部脊柱管狭窄症の確定診断がなされているのか?
被害者のMRI画像所見は、変形性頚椎症=変形性脊椎症に類似しています。
また、訴える症状は、脊髄の圧迫が主であれば脊髄症を、神経根の圧迫が主であれば神経根症を、さらには、両方の症状を示すこともあり、この点、変形性脊椎症、頚椎症性脊髄症=脊椎症性脊髄症に酷似しているのです。
2)脊柱管狭窄症は、通常交通事故を原因として発症するものでは無いため、事故前に症状があって、通院歴のある被害者は、一定の素因減額が想定されます。
厚生労働省は、広範脊柱管狭窄症を公費対象の難病と指定おり、一定の条件を満たせば、治療費は国庫負担されています。
3)認定される後遺障害について、
脊柱の固定術等が実施されたときは、脊柱の変形等で11級7号の認定が想定されます。
脊柱の可動域が、2分の1以下に制限されていれば、8級2号の認定が想定されます。
保存療法にとどまるものの多くは、12級12号の認定です。
4)さらに、受傷直後は、頚部捻挫の傷病名で、長期の治療が継続され、最終的に脊柱管狭窄症や後縦靭帯骨化症、頚腰部椎間板ヘルニア等の傷病名で、脊柱管拡大形成術に至ったものについては、損保料率機構調査事務 所は、すべての治療先に症状照会を行い、自覚症状や他覚的所見などから、事故との因果関係を否認して等級を認定しないケースが多いようです。
症状照会の用紙のタイトルは、以下の2種類です。
「神経学的所見の推移について」「頚椎捻挫・腰椎捻挫の症状の推移について」
この記事を書いた人
弁護士法人江原総合法律事務所
埼玉・越谷地域に根差し、交通事故に豊富なノウハウを持つ江原総合法律事務所の弁護士までご相談下さい。交通事故分野における当事務所の対応の特徴は、「事故直後」「後遺症(後遺障害)の事前認定前」からの被害者サポートです。適切なタイミングから最適なサポートをいたします。